対話を通してみ教えを伝える、名和さんの法話実践|9分59秒 法事実践道場#6 レポート

9分59秒という限られた時間の中で法話を実践していただき、法事における伝道のあり方をみんなで考える「法事実践道場」。

前回は、浄土真宗本願寺派 北海道玄誓寺の上本周作さんをゲストに迎え、7回忌を想定して法事の法話を行っていただきました。第6回となった今回は、同じく北海道の三笠市善行寺住職であります、名和康成(なわ・こうじょう)さんに法事での法話を実践していただきました。

名和さんが法事で実践されている、おつとめや法話の流れは以下のとおりです。

・法事の冒頭挨拶
・お焼香の案内
・三奉請
・表白
・仏説無量寿経(四十八願)
・四句念仏
・和讃(安楽浄土に至る人)
・願似回向
・法話(10分程度)

なるべくコンパクトに。対話を重視した法話

名和さんが実践されている法事の特徴は、時間が短めであることです。もともと人間の集中できる時間は15分から、長くても30分程度だと言われています。加えて、時間がタイトな場合もあるので、あまり法事の時間が長くなりすぎないように気をつけているそうです。

そして、もう一つの特徴が、法話は参拝者の方々にお尋ねしながら、話を組み立てていくようにしていることです。例えば、有名な方を法話の題材にしたとしても、その方を知らない人がいるかもしれません。

そこで、参列者の人物像を共有しながら法話を進めることを大切にされています。しかし、参列者の人となりは初見では分からないので、ご本人に尋ねるしかありません。なので、話の構成や内容は各法事の場に応じて変化することが多いそうです。

法話の実践

今回は、当法話実践道場に参加されていた僧侶・石田えり子さんの父親の法事(7回忌)を想定して法話を実践していただきました。名和さんは石田えり子さんはもちろん知っておられますが、えり子さんのお父さんのことは全く知らないので、即興での法話です。

名和:ただいま石田えり子さんのお父さんの7回忌のお勤めをしました。正直に申し上げまして、私はお父様のことを全く存じ上げないんですけれども、7回忌を迎えられまして、色々な思いの中でお勤めされていることと思います。差し支えなければお父さんとの思い出が色々とあるかと思いますが、ぱっと一番思い出されるのはどんなことでしょうか?

石田:父は厳しいところもたくさんある人でした。でも、可愛がってもらっていたと思います。私が一人暮らしをしているときにすごく心配していたらしいんです。あるご門徒さんから「痩せていることを父が心配している」と聞いたこともありました。そのことを聞いて、父の私に対する思いを感じました。今になってよく思い出します。

名和:私の祖父は、私が1歳になる前に亡くなっています。なので、祖父のことは全然知りません。でも、周りのご門徒さんが教えてくださるんですよね。門徒さん曰く、私が生まれたときに祖父は大変喜ばれたそうです。そういう話を聞くと僕のこと愛してくれた人がいたんだなと、嬉しい気持ちになります。

えり子さんも、お父さんが亡くなられて悲しかったと思います。でも、お父さんが思ってくれていた思いは、消えて無くなることはないですよね。生きている間の出会いはできないかもしれないが、そういった思いは今なおえり子さんの胸の中に残っていると思うんです。ときには、お父さんの思いに励まされたり、支えになってくれたりすることがあるのではないでしょうか?

名和:法話の勉強をしているときに「大切な方が亡くなったときに涙が止まらなくなる。でもそれはある意味で幸せなことでもある」と教わったことがあります。つまり、涙があふれるほどその人との関わりが深かった、という証でもあると。これは素晴らしいことだと思いますね。

僕は今年48歳になります。48年間生きてきて、私のことをまるで自分のように可愛がり、心配してくれる人は、どれだけいらっしゃるでしょうか?多分、そんなにいらっしゃらないと思うんです。そういった方と出会えた人生だと思うと、素晴らしいと感じることがあります。

えり子さんのお父さんにお会いしたことはありませんが、えり子さんのことは知っています。えり子さんが日々法務に励むお姿を拝見していると、きっとお父さんの影響も色々あったのではないかと思います。そう思うと、えり子さんを通してお父さんにも出会っているのかもしれませんよ。

浄土真宗のみ教えを聞かせていただきますと、亡くなられるとお浄土で仏様になられ、そこにとどまるだけでなく、この世界に帰ってきて残された方を導いていかれます。

まさに、えり子さんはお父さんに導かれていますよね。どうか、お父さんをお偲びしつつ、仏さまにお参りさせていただく。お父さんに導かれて今の自分がある。と受け止めると喜ばれるのではないでしょうか。

法話の実践を終えて

以上が、名和さんが普段実践されている法話です。参列者の方とやり取りをしながら、亡くなった方との接点を振り返りつつ、その接点が今も続き、これからも続いていくことをお伝えしたいという思いが伝わってきます。

参加者の方からは「法事をされる家によって、このスタイルが合うかどうか分かれるかとも思う」「会話が途切れても急かさない感じが良い、待つことも大切だと思う」といった感想がありました。

また、石田えり子さんからは「10年たった今でも、色んな思いが込み上がってくると気づかせていただいた。すごく嬉しい」とおっしゃっていました。

まとめ

第6回の法事実践道場は、北海道善行寺の名和康成さんに、法話の実践を行っていただきました。名和さんの法話は一言で表現するならば「会話式法話」でしょうか?浄土真宗の仏事は仏徳讃嘆、つまり仏さまのみ教えを喜ばせていただく場ですが、同時に亡くなった方をお偲びさせていただく場でもあることに違いありません。
そうしたとき、一方的にみ教えを伝えるのではなく、こうして亡き方のご生前に親しかった人から人物像や思い出を引き出し、ともにお味わいさせていただく形があることを教えていただきました。皆さまもぜひ、ご参考にされてみてはいかがでしょうか?

今回もご参加・ご拝読ありがとうございました。次回は10/1(火)21:00- です。
ぜひご視聴・コメントくださいませ。合掌

法衣袈裟コンシェルジュ・ナオシチ
当YouTubeの運営者「直七法衣店 四代目ナオシチ」は 「直七法衣袈裟専門学院」を立ち上げ、以下2つの軸で 法衣袈裟を通して「職人と宗教を次世代へ」つなげます。 ◎袈裟スクール(技術をつなげる) ◎法衣袈裟検定(知識をつなげる) 直七LINEコミュニティで発信していきます。 -- 直七LINEコミュニティは、次の方へ...
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直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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