法事の法話はどう組み立てる?北海道の浄土真宗僧侶が語る「法話ができるまで」|10月1日配信「寺トーーク」開催レポ

1周忌や3回忌といった法事での法話を実践していただく「9分59秒 法事実践道場」。第5回は北海道の浄土真宗本願寺派僧侶である上本周作さん、そして第6回は同じく北海道の浄土真宗本願寺派僧侶である名和康成さんに行っていただきました。それぞれが創意工夫を凝らしながら法事での法話を考えておられます。

10月1日に配信した「寺トーーク」では、法事実践道場の回と同じく永田弘彰さん、名和康成さん、石田えり子さん、上本周作さんにご出演いただき、僧侶らが取り組んでおられる創意工夫のあり方に迫ります。

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名和康成さんの法話実践

上本周作さんの法話実践

どうやって法話を作っているか?

そもそも、今回の「寺トーーク」が配信されるきっかけになったのは、出演者の石田えり子さんが抱いていた素朴な疑問でした。それは「上本さんや名和さん、永田さんはいったいどうやって法話を作られているのか?」ということでした。

石田えり子さん(以下:石田):普段、法事とかで法話をする機会があるが、法話の内容をどうやって考えればよいか悩んでいます。私は布教使ではありませんので、布教使の皆さんにぜひ尋ねてみたいなと思いました。

名和康成さん(以下:名和):確かに、他の僧侶の方が法話を作っている様子って意外に知らないですよね。特に、法事の法話は聞く機会がほとんどないので、より気になります。

永田弘彰さん(以下:永田):やっぱり、身近に仏教に感じてもらうためのアンテナを意識するようにしています。今の時期(※ライブ配信当時、世間はメジャーリーグでの大谷翔平選手の活躍や、オリンピック等のスポーツが話題だった)であれば大谷選手やオリンピック・パラリンピックなど、皆さんが昨日見た映像を共有できるところが大きなメリットです。

先日は職業病なのか、オリンピックを見ながら法話を考えていましたね(笑)。とはいえ、時事ネタに全然共感していただけないことも有ります。決して法事を実験台にしているわけではありませんが、いろんな題材を取り扱いながら、皆さんの反応をうかがっています。

上本周作さん(以下:上本):私も永田さんと同じく、日頃から法話に関するアンテナを立てるように心がけています。SNSも普段から活用しているので、そういうところからヒントを頂く場合もありますね。SNSで出会った良い話や良い動画の構成を拾って、なんで良いと思うかを分析していくんです。すると合法(※)にうまく繋げられることがあります。

(※合法:がっぽう。ご法義に合わせて法味豊かに法話を締めくくること。本説で展開してきた話が、法話のテーマを明らかにしていることをしっかりと確認します。)

法事のときに大切にしているのは、故人様やご門徒様との思い出話です。なので、これまでのお参りやお寺の行事等で積み重ねられたご門徒さんとの思い出も忘れないようにしています。

名和:法事ではいかに亡くなった方をお偲びしつつ、仏様の教えに触れ合っていただくかを大事にしています。なので、あまり時事ネタを組み込むことはないですね。亡くなった方のご生前の姿を思い出しながら、その人の歩まれてきた道をたどり、み教えを混ぜ込んでいくようにしています。

法事の場合、これまでにお寺に来たことがない方々に対して法話をすることも多いです。なので、まずはお参りのご縁を大切にしていただくように進めています。そして、お参りをご縁として仏様に出会っていくことが何よりも大切であることを感じていただきたいですよね。なので、僕は法事を通してお寺や仏様とご縁を結んでくださるところに重きをおいています。

永田:法事の場合、お子さんやお孫さんが遠くからお見えであることも多いです。なので、来ていただいたことを褒め称えるようにしています。来た甲斐があったと思ってもらえるよう、やってよかったとまずは思ってもらうよう心がけています。ご門徒さんにとって、「やってよかった」と思っていただきながら法事を終えられたら、場の空気感もおのずと良くなりますよね。

法話の作成で一番大切にしていることは?

石田:みなさんが法話を作成されるとき、一番大事にしていることはなんですか?

上本:法話にのぞんだときの流れですね。前段階は「枕」を必ず入れるようにしています。亡き方に向かっていく矢印。そうではなく亡き方から向かってくる矢印を大事にするのが法事であること。普段なかなか気がつかないことに気づかせていただけるのも、亡き方がご縁となって私たちを導いてくださっているとまとめています。僕を含めて亡き方にお育ていただいていると味わっていくようにしています。

名和:石田さんは自分が重きをおいていること、大切にしていることは有りますか?

石田:私は「正面の仏様が阿弥陀さまだ」ということを知っていただくことを心がけています。例えば、お寺で法事するときは内陣にいらっしゃる仏さまを一緒に見ましょう。と声を掛けると意外と関心を示してくださいます。

永田:仏像と出会えるチャンスは、お寺でのお参りぐらいしかありませんよね。また、そのお寺の歴史や空気感を肌で感じられるご縁でも有ると思います。私も、お寺の本堂の法事で、阿弥陀経の壁画を題材にしてお経を説かせていただくことも多いです。いきなり極楽浄土の解説を始めるのではなく、まずはお寺のビジュアルにうったえていくような感じです。

名和:聞いてもらえるきっかけになりますよね。

永田:そうですね。駐車場には親鸞聖人のお像がいらっしゃることをお伝えすると、帰り際に見てくださる方も多いですよ。それでも十分だと思います。門徒さんの記憶に少しでもとどめていただければよいと思います。

法話が「スベった」ときはどうする?

石田:法話を行っていて「聞いてもらえていないな」と感じるときがあります。それを感じ取ったときに頭が真っ白になってしまうんです。これは布教使さんも感じるのでしょうか?私の場合、テンパってしまってそのまま自分でもよく分からないまま、法話が終わってしまうこともあります。そういうときはどうされていますか?

名和:ありますよね。ド滑りタイム(笑)。

永田:最強の対処法は「早めに切り上げること」だと思います。というのは、そこから違う切り口から伝えようとしても、場の空気に負けてしまうこともあるからです。あるいは、「早めに終わってほしい」というニーズなのかもしれません。そうした空気感に気づいた時は、早めに切り上げることもありますね。

上本:私もかつてはそういった場に出くわして、焦ってしまうこともありました。でも、当時は教化者としての意識が強かったのかなと反省しています。伝えよう、伝えなきゃと思う気持ちが焦りにつながったといいますか。なので、そうした意識を一度手放して、伝えるのではなく、一緒に味わっていくと考えていくと、少し楽になるかもしれません。

名和:確かに、伝えなきゃと思うとうまく行かない場合も多いですよね。「亡き方が仏となってご縁を作ってくださっている」のがご法事です。つまり、自分自身も亡き方をご縁として仏法を味わっていく一人であって、あくまでも伝える役割を仰せつかっているだけなんですよね。

なので、上本さんと同じく「伝えなきゃ」という気持ちを少し差し置くように心がけておくと、後で伝わらなかったのはなぜだろうと冷静に振り返ることができるんじゃないかと思います。

まとめ

今回は、北海道の浄土真宗僧侶の方々といっしょに、法事における法話の作り方を考えました。その方法はいくつかありますが、法事は亡き人をお偲びするご縁を通して、仏様に出会ってゆく場であることを大切にされています。

ナオシチでは引き続き、法事の法話を考える場、研鑽できる場をつくっていければと思います。合掌

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この記事を書いた人

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