袈裟の「体」「色」「伝」:仏祖が定めた究極のシンプル・ファッション

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:仏教の教えにおいて、どうしても布が入手できない辺地で、如来が着用を許したとされている袈裟の材料は次のうちどれでしょう?

  1. 動物の皮
  2. 木の葉を編んだもの
  3. 葦(よし)を編んだもの

原文

 袈裟をつくるには、麤布(ソフ)を本とす。麤布なきがごときは、細布をもちゐる、麤細の布ともになきには、絹素(ケンソ)をもちゐる。

絹布ともになきがごときは、綾羅(リョウラ)等をもちゐる。
如来の聴許なり。絹布綾羅等の類、すべてなきくにには、如来また皮袈裟を聴許しまします。

おほよそ袈裟、そめて青黄赤黒紫色ならしむべし。
いづれも色のなかの壊色(エシキ)ならしむ。
如来はつねに肉色(ニクシキ)の袈裟を御しましませり。これ袈裟色(ケサシキ)なり。

初祖相伝の仏袈裟は青黒色(セイコクシキ)なり、西天(サイテン)の屈眴布(クツジュンフ)なり。いま曹谿山にあり、西天二十八伝し、震旦五伝せり。いま曹谿古仏の遺弟(ユイテイ)、みな仏衣の故実を伝持せり、余僧のおよばざるところなり。


現代語訳

袈裟を作るには、本来、粗末な麻や綿の布(麤布)を用いることを基本とします。粗末な布がない場合は、きめの細かい麻や綿の布(細布)を使います。粗い布も細かい布もない場合は、白絹(絹素)を使用します。

麻や綿、白絹も得られない場合は、上等なあや絹やうす絹など(綾羅)を使うことも、釈尊は許しています。それらの布類がすべて手に入らない地域では、釈尊は皮の袈裟を用いることを許されました。

およそ袈裟は、青、黄、赤、黒、紫色に染めるべきですが、どの色も壊色(くすんだ色、濁った色)にしなければなりません。釈尊は常に肉色の袈裟を着用されました。これが袈裟色と呼ばれるものです。

中国禅宗の初祖(菩提達磨)が伝えた仏袈裟は、青黒色をしたインドの屈眴布(木綿の花心を集めて織った布)でした。この袈裟は今、曹谿山(中国)に安置されており、インドで二十八代、中国で五代を経て伝えられたものです。現在、曹谿の古仏(六祖慧能)の法を継ぐ弟子たちは、皆、この仏袈裟の古来の作法を伝えています。これは他の僧侶には及ばない領域です。


語句説明

  • 麤布(そふ):粗末な麻や綿の布
  • 絹素(けんそ):白絹(未染色の絹)のこと
  • 綾羅(リョウラ):上等なあや絹やうす絹といった絹織物
  • 壊色(えしき):青、黄、赤、黒、紫などの色を、くすませたり黒ずませたりした色。世俗の人が「良い」「立派だ」と思わないようにするための色とされる
  • 肉色(ニクシキ):釈尊が常に着用したとされる色。これが袈裟本来の色であるとされる
  • 初祖(しょそ):中国禅宗の初祖である達磨大師のこと
  • 屈眴布(クツジュンフ):インド産の木綿の花心を集めて織った布
  • 曹谿山(そうけいざん):中国にある山で、六祖慧能禅師が法を伝えた地。祖師が相伝した仏衣が安置されているとされる場所

詳細な解説

袈裟の素材に込められた「非貴賤」の精神

袈裟の素材を選ぶ順序は、世間一般の価値観とは逆の階層になっています。
まず、袈裟は、本来「糞掃衣(ふんぞうえ)」、すなわち捨てられたぼろ布(清浄な衣材)を拾い集めて作った衣を最も清浄なもの(最上清浄)とするのが諸仏のしきたりです。

糞掃衣は、人が捨てたものであり、世間が使用しないものです。 今回の原文が示すように、最も理想的なのは粗末な麻や綿の布(麤布、細布)ですが、これが無ければ絹素(白絹)、さらに綾羅(上等な絹)の使用も許されています。

そして、それらすべての布類がない辺地においては、皮の袈裟(獣の毛や皮で作られた毳衣など)の使用さえも許されることになります。
この柔軟な許容の背景には、修行者が衣の素材(絹か布か、高価か粗末か)という世間的な「見方や考え方(見解)」を投げ捨て、目の前の素材を純粋に仏道修行のための「糞掃」として受け入れることの重要性があります。袈裟の功徳は、素材の良し悪しではなく、仏法のためにあるという清らかな精神にこそ宿るからです。

この教えは、袈裟そのものが仏の皮肉骨髄を正しく伝えるものであり、世間的な価値観を超越した解脱の服であるという、深い仏法の教えを体現していると言えます。

世俗の欲望を離れる「壊色」の原則

袈裟の色は、青、黄、赤、黒、紫色など様々な色で染められますが、重要なのは、そのどれもが「壊色(えしき)」、つまり「くすんだ色」や「濁った色」でなければならないという点です。

これは、袈裟が五欲の思い(名誉欲、色欲、食欲、財欲、睡眠欲など)を離れ、それを貪り愛する心が生まれないようにするためです。

世間の人が見て「良いな」「立派だな」「高価だな」と思わないような色にすることが意図されています。この壊色に染めることにより、袈裟は煩悩を断ち切る清浄な衣となるのです。 釈尊自身が常に着用していたのは「肉色(ニクシキ)」の袈裟であり、これこそが真の袈裟色であるとされます。

初祖から伝わる青黒色の正伝の袈裟

この袈裟の伝統的な正しさは、仏祖から代々相承されてきた系譜に拠ります。原文では、初祖(達磨大師)が伝えた仏袈裟は青黒色であり、インドの屈眴布という木綿製の布であったと記されています。

この袈裟は、インドで二十八代、中国で五代を経て、曹谿山(六祖慧能禅師の地)に伝えられました。この「正伝の袈裟」の体色量(素材、色、大きさ)を正しく伝承していることこそが、如来の皮肉骨髄を正しく伝えている証なのです。

仏道に志す者は、この祖師が伝えた正しい伝統の袈裟を受け、今様の新作の袈裟を受けてはならないと戒められています。袈裟の受持は、単なる衣服の着用ではなく、無上の悟りを成就するための護身の札となるほどの、広大無量の功徳があるからです。


問いかけとまとめ

袈裟の素材や色に関する厳格な規定は、世俗的な価値や執着を徹底的に捨てるという、仏道修行の根本的な姿勢を私たちに教えてくれます。袈裟は、それを身にまとう者だけでなく、それを見た者や、その一部を得た者にさえ、計り知れない利益をもたらす「解脱の服」であり、「福田衣」と称されます。

私たちは日々の生活の中で、つい「見た目の良さ」や「素材の価値」に囚われがちですが、本当に大切なのは、その背景にある「心」と「行い」です。袈裟の教えは、内面の清浄さこそが最高の功徳を生むという真理を、形を通して示していると言えるでしょう。

あなたにとっての「袈裟」とは、物質的な豊かさではなく、心を清めるためのシンボルでしょうか?


クイズの答え

A. 動物の皮

解説:
布や絹といった衣材が一切ない地域においては、如来は皮袈裟の着用を許可したとされています。これは、袈裟の持つ功徳が素材の質に左右されないこと、そして修行の機会を失わないための現実的かつ慈悲深い許容を示しています。また、皮袈裟は、鳥獣の細い毛を織った毳衣(せいえ)と関連して言及されることがあります。


この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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