言行不一致でイライラした時どうする?仏教が教える「心のゴミ」の拾い方

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:言行不一致の人を見た慧者(智慧ある者)が、まず「除くべき」とされたものは何でしょう?

  1. 相手の不浄な行い
  2. 相手の言葉や心にある怒り
  3. 自分の中に生じた怒り(恚悩)

原文

中阿含経(チュウアゴンキョウ)に曰(イ)く、

「復た次に諸賢、或いは一人有りて、身は浄行(ジョウギョウ)に、口意(クイ)は不浄行(フジョウギョウ)ならんに、若し慧者(エシャ)見て、設(モ)し恚悩(イノウ)を生ぜば、応当(マサ)に之を除くべし。

諸賢、或いは一人有りて、身は不浄行に、口意は浄行ならんに、若し慧者見て、設し恚悩を生ぜば、応当に之を除くべし。

当に云何が除くべき。」


現代語訳

「また、修行者たちよ。もし、身体の行いは清らかだが、言葉や心が清らかでない人がいたとする。もし智慧ある者(慧者)がその人を見て怒りの心(恚悩)を抱いたならば、その怒りは除かなければならない。
また修行者たちよ。もし、身体の行いは清らかでないが、言葉と心の行いは清らかである人がいたとする。もし智慧ある者がその人を見て怒りの心を抱いたならば、やはりその怒りは除かなければならない。
それでは、どのようにしてその怒りを除けばよいのだろうか。」


語句説明

  • 浄行(ジョウギョウ):清らかな行い、善行のこと
  • 不浄行(フジョウギョウ):清らかでない行い、悪行のこと
  • 口意(クイ):言葉(口)と心(意)の行いを合わせたもの
  • 慧者(エシャ):智慧のある者、賢者
  • 恚悩(イノウ):怒りの心、いらだちや煩悩

詳細な解説

怒りを除くための「心の糞掃衣(ふんぞうえ)」

この経典が提起する問い「当に云何が除くべき(どのようにして除けばよいか)」に対する答えは、仏教の修行者が身に着ける「糞掃衣」の作法の中に示されています。糞掃衣とは、文字通り捨てられたぼろ布(糞掃)を拾い集めて作った袈裟のことで、金銀珠玉や綾羅錦繍といった高級品ではなく、ただ仏法のためにある、最も清浄な衣とされます。

閑寂処に住む立派な修行僧(阿練若比丘)が糞掃衣を作る際、掃き溜めから拾った汚れたぼろ布から、大便や小便、鼻水などで汚れていない部分だけを選び、裂いて取るという作法があります。この具体的な作法が、他者の矛盾や欠点に対する怒りを除く比喩として用いられます。

「彼の身の不浄行を念ふこと莫れ、但だ当に彼の口意の浄行を念ふべし」

つまり、他者の「不浄な行い」(汚れた部分)に心を留めてはならない。代わりに、その人の中にある「清浄な行い」(汚れていない部分)だけを思いなさい、と教えているのです。

形から入ることで内面が変わる

この教えは、外見や表面的な情報に囚われることの愚かさを戒めています。袈裟は、その形から入ることによって、修行者自身の精神を整える力があります。袈裟には「解脱服」「福田衣」といった様々な呼び名があり、仏の身体や心そのものであるとされます。

他者に対しても同様に、その人が持つ「良い部分」という清浄な布地に目を向け、それを尊重し敬うことで、自分自身の心の清浄さ(心の良田)を保ち、煩悩という「毒矢」から身を護るという実践へと繋がるのです。


問いかけとまとめ

仏教は、他人の欠点を指摘する前に、まず自分自身の心に生じた波立ち(恚悩)を取り除くことを促します。私たちが誰かの言動に腹を立てる時、それは自分の中の「理想像」や「こうあるべき」という固定観念が揺さぶられているからです。

もし日常でイライラを感じたら、「心の糞掃衣を拾う法」を思い出しましょう。相手の不浄な部分を裂いて捨て、その人の中にある「清浄な部分」に焦点を当ててみてください。それは、自分自身の心を清浄に保ち、悟りの芽を育む良田とする最上の功徳となるはずです。

私たちが他者の欠点に焦点を当てて怒りを感じるのは、まるで美しい美術品に付着した小さな埃だけを凝視し、作品全体の壮大さを見失ってしまうようなものです。仏教の教えは、その埃に囚われるのではなく、作品の持つ本来の価値(浄行)を正しく評価するように、と諭しているのです。


クイズの答え

C. 自分の中に生じた怒り(恚悩)

解説: 慧者(智慧ある者)は、他者の言行不一致に気づいたとしても、まず自分自身の心に生じた怒りや煩悩を「除くべき」と教えられています。これは、他者の不浄な行いに囚われることが、修行者自身の清浄な心を妨げるためです。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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