袈裟は単なる衣服ではない?『正法眼蔵』が説く「究極の守り札」としての功徳

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:袈裟を身に着ける功徳として、正しくないものは次のうちどれでしょう?

  1. 袈裟を尊重すれば、天上界に生まれることができる。
  2. 袈裟の色は、五欲を離れるための壊色(くすんだ色)にする。
  3. 袈裟は、修行者の猛烈な修行の力を増幅させる。

原文

四つには、袈裟は即ち是れ人天の宝幢(ホウドウ)の相(ソウ)なり。尊重敬礼(ソンジュウキョウライ)すれば、梵天(ボンテン)に生じることを得。

五つには、袈裟を著(ヂャク)する時、宝幢(ホウドウ)の想を生じ、能く衆罪(シュザイ)を滅し、諸の福徳を生ず。

六つには、本(モト)袈裟を制するには、染めて壊色(エシキ)ならしむ。五欲(ゴヨク)の想を離れ、貪愛(トンアイ)を生ぜず。

七つには、袈裟は是れ仏の浄衣(ジョウエ)なり。永く煩悩を断じて、良田と作(ナ)るが故に。


現代語訳

四、袈裟は、人間界や天上界にとっての仏法の宝の旗印です。これを敬い礼拝すれば、梵天界に生まれることができます。

五、袈裟を着る時には、自らが仏法という宝の旗印であるという意識が生じ、多くの罪を滅し(衆罪を滅し)、多くの福徳が得られます。

六、本来、袈裟は壊色(くすんだ色)に染めて作るように定められています。これを身に着けることで、世俗の五つの欲の思いを離れ、貪り愛する心(貪愛)が生じなくなります。

七、袈裟は、仏が身に着ける清浄な衣です。これを着れば、永久に煩悩を断ち、幸福の収穫を得る良田となります。


語句説明

  • 宝幢(ホウドウ):宝の旗印、仏法の象徴
  • 尊重敬礼(ソンジュウキョウライ):尊び敬い、礼拝すること
  • 梵天(ボンテン):仏教の世界観における最高位の天界、またはそこに住む神
  • 壊色(エシキ):青、黄、赤、黒、紫色などを用い、あえてくすませて世俗の美を避けた色
  • 五欲(ゴヨク):名誉欲、色欲、食欲、財欲、睡眠欲など、五つの世俗的な欲望
  • 貪愛(トンアイ):貪り愛する心、執着
  • 浄衣(ジョウエ):清浄な衣。仏が身に着ける衣
  • 良田:豊かな収穫(幸福や悟り)をもたらす良い田畑

詳細な解説

袈裟は仏法そのものの「旗印」

第四の功徳で袈裟は「人天の宝幢の相」と説かれています。宝幢とは、仏法が世に現れたことを示す荘厳な旗印のことであり、袈裟はその仏法という宝の象徴なのです。

袈裟自体が仏法のエッセンスを具現化しているため、たとえ袈裟を身に着けていない一般の人々や天界の存在であっても、この袈裟を心から尊重し、敬って礼拝するだけで、最高の天界である梵天に生まれるという途方もない福が得られるとされています。これは、袈裟に触れるという行為が、いかに強力な功徳を生み出すかを示しています。

着用者の心に生まれる「宝幢の想」

第五の功徳は、袈裟を着る者自身の内面に作用する力です。袈裟を身に着ける時、「自らが仏法の旗印である」という意識(宝幢の想)を持つことが重要です。

袈裟は、解脱服や福田衣、如来衣など様々な呼び名を持つように、それ自体が仏の身体であり、仏の心であるとされます。袈裟を着用し、自覚を持つことで、修行者は自然と多くの罪業を滅し(衆罪を滅し)、福徳が増していくのです。また、袈裟を仏の塔である(塔想)と思い敬うことで、福徳が生まれ、罪が滅し、人間界や天上界をも感化する力を得るとされています。

欲を断ち切るための「壊色」

第六の功徳は、袈裟の色の規定が持つ深い精神性を示しています。世間の衣服は「欲染(欲の汚れ)を増す」のに対し、袈裟は修行の妨げとなる五つの世俗的な欲望(五欲)から離れ、貪り愛する心(貪愛)を生まないために、壊色(くすんだ色)に染めると定められました。

袈裟の材料も、本来は捨てられた糞掃衣(ぼろ布)を拾い集めたものが最上とされています。これは、世俗的な価値や執着を徹底的に捨てるという、仏教の清貧の精神を体現するものです。この質素な姿と色が、欲望から遠ざかる助けとなるのです。

煩悩を断つ「浄衣」と「良田」

第七の功徳では、袈裟は「仏の浄衣」であり、「良田」に喩えられます。浄衣とは、清浄な仏の衣を意味し、これを身に着けることで、永久に煩悩を断ち切る結果につながります。

良田に種を蒔けば豊かな実りがあるように、袈裟をまとうことは、悟りへ至るための種を蒔くことと同義であり、幸福の収穫(福徳)をもたらす肥沃な土壌となるのです。

特に重要な点として、この袈裟の持つ優れた利益(十勝利)は、修行者が猛烈な努力(猛利恆修)をした結果ではなく、ただ袈裟の持つ功徳(神力)によるものだと説かれています。袈裟そのものが持つ、凡夫には計り知れない不思議な力によって、仏道の功徳が円満するとされるのです。


問いかけとまとめ

袈裟の教えは、「形」を整えること、つまり正しい作法や精神性を重んじることの重要性を教えてくれます。袈裟という清浄な「形」を身につけることで、私たちの心も自然と整い、煩悩を断ち、福徳を生む「良田」へと変わっていくのです。

これは仏教徒に限った話ではありません。私たちが日常の中で、一つでも「清らかな行い」や「正しい心構え」を形として意識し続けるならば、それは袈裟の功徳のように、やがて大きな福徳となって実を結ぶのではないでしょうか。

物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさを象徴する「袈裟」。あなたにとって、日々の生活の中で「宝幢の想」を生じさせ、「良田」を耕すための「袈裟」となるものは何でしょうか?その小さな「形」を大切にすることが、悟りの道へと繋がる第一歩なのかもしれません。


クイズの答え

C. 袈裟は、修行者の猛烈な修行の力を増幅させる。

解説: 袈裟の功徳は、修行者の「猛利恆修(猛烈な修行)」の力によるのではなく、ただ袈裟そのものの神力によるものだと説かれています。袈裟の力は不思議であり、凡夫や賢者にも計り知れないのです。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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