在家の人が袈裟を持つのはなぜ? 皇帝も神々も尊んだ「大乗最極の秘訣」とは

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:中国の皇帝の中で、袈裟を受持し、仏教を篤く敬った人物として原文に挙げられていないのは誰でしょう?

  1. 梁の武帝
  2. 隋の煬帝
  3. 漢の武帝

原文

「在家の人天(ニンデン)なれども、袈裟を受持することは、大乗最極(サイゴク)の秘訣なり。いまは梵王(ボンノウ)釈王(シャクオウ)、ともに袈裟を受持せり。
欲色(ヨクシキ)の勝躅(ショウチョク)なり、人間には勝計(ショウケイ)すべからず。

在家の菩薩みなともに受持せり。震旦国(シンタンコク)には、梁の武帝(リョウのブテイ)、隋の煬帝(ズイのヨウダイ)、ともに袈裟を受持せり。
代宗(ダイソウ)粛宗(シュクソウ)ともに袈裟を著(ヂャク)し、僧家に参学(サンガク)し、菩薩戒(ボサツカイ)を受持せり。その余の居士婦女(コジブニョ)等の、受袈裟受仏戒のともがら、古今の勝躅なり。」


現代語訳

在家の人間や天人であっても、袈裟を受けて大切に身に着けることは、大乗仏教の教えにおける究極の秘訣なのです。今では梵天王や帝釈天なども、共に袈裟を護持しています。
これは欲望の世界(欲界)や物質的な世界(色界)における、まことに優れた行跡であり、人間界においては数えきれないほどの人が袈裟を護持しているのです。

在家の菩薩(修行者)たちは皆、袈裟を受持しています。たとえば中国(震旦国)では、梁の武帝や隋の煬帝などが、共に袈裟を受けて護持していました。
また唐の代宗や粛宗なども、共に袈裟を着けて僧侶のもとで学び、菩薩戒を受けました。その他の在家の男子や女性たちにも、袈裟を受けて仏戒を受けた者たちがあることは、古今を通じて優れた手本となっています。


語句説明

  • 人天(ニンデン):人間界と天上界の生き物
  • 大乗最極(サイゴク)の秘訣:大乗仏教の教えにおける最も究極的な奥義
  • 梵王釈王(ボンノウシャクオウ):梵天王と帝釈天。仏教の守護神であり、袈裟を護持している
  • 勝躅(ショウチョク):優れた足跡、手本
  • 震旦国(シンタンコク):中国を指す異称
  • 居士婦女(コジブニョ):在家の男子(居士)と女性(婦女)の信者
  • 菩薩戒:在家者や出家者が受ける大乗仏教の戒律

詳細な解説

袈裟は「仏の心」そのもの

袈裟は、単なる衣類ではなく、「仏弟子の標幟(目印)」であり、諸仏が敬い帰依する対象であり、「仏身なり、仏心なり」とまで称されます。袈裟は古くから「解脱服」と呼ばれており、これを身に着けることで、過去の悪行による業障(ごっしょう)や煩悩の障り、報いの苦から皆解脱することができると説かれています。
その功徳は計り知れず、袈裟の力は、修行者が勇猛に精進する力(猛利恆修の力)によるのではなく、ただ袈裟そのものが持つ神力によるとされています。仏教の悟り(無上菩提)を成就する護身符子(ふし)となるため、ほんのわずかな間でも身にまとい護持するべきものなのです。

天上の存在も袈裟を尊ぶ理由

原文では、最高位の神である梵天王(梵王)や帝釈天(釈王)も袈裟を受持していると明かされています。これは、袈裟の功徳が、人間界(欲界)や物質的な世界(色界)の範疇を超えた、普遍的な真理の象徴であることを示しています。
袈裟は「福田衣」とも称され、福の収穫を与える良田に譬えられます。この功徳により、龍が袈裟の糸一筋を得れば三つの苦悩を免れ、在家の者が心から袈裟を敬い護持すれば、一切の悪鬼が近づくことができないのです。

権力者が示した「古今の勝躅」

袈裟の受持が在家者にとって「最極の秘訣」であるという教えは、歴史上の権力者たちによっても実践されてきました。
中国(震旦国)では、梁の武帝隋の煬帝が共に袈裟を受持し、唐の代宗や粛宗といった皇帝たちも、袈裟を着用して僧侶の教えを学び、菩薩戒(大乗仏教の在家者向けの戒律)を受けました。
また日本においても、聖徳太子が袈裟を受持し、経典を講説した際には天から宝華が降る奇瑞があったと伝えられています。聖徳太子は、仏の使いとして衆生の父母(導師)と称され、彼の功績によって仏法が日本に広まることとなりました。

道元禅師は、これらの帝王や居士(在家の男子)、婦女(在家の女性)が袈裟と仏戒を受けたことを「古今の勝躅(優れた手本)」と讃えます。これは、たとえ帝位にあろうとも、袈裟を受持し菩薩戒を受けることが、人としてこの上ない喜び(慶幸)であるという教えを裏付けているからです。
袈裟は、その形が正しく伝承されていれば、その材質が絹であろうと布(麻や綿)であろうと、本来の姿を失わず「仏法のためにある」ものであり、身に着ける者を仏祖の皮肉骨髄を正しく伝える者とするのです。


問いかけとまとめ

袈裟を受持するという行いは、僧侶だけの特別な修行ではなく、私たち在家者にとっても、無上の悟りへ向かうための「最極の秘訣」であることが分かりました。
たとえほんのわずかでも、袈裟を身にまとい、その功徳を心に念じる(思いを巡らす)ことは、広大な功徳を成就する道筋となります。袈裟とは、私たちの日常の行いを浄化し、煩悩という毒矢から身を守ってくれる「堅固な金剛の甲冑」のようなものです。
私たちも、この広大で計り知れない功徳を持つ袈裟の教えを心に留め、日々の生活の中で仏道に触れる機会を大切にしていきましょう。あなたにとって、袈裟や仏教の教えは、どのような「護身符」となり得るでしょうか?


クイズの答え

クイズの答えは C. 漢の武帝 です。

【解説】原文には、中国(震旦国)の帝王として、梁の武帝、隋の煬帝、唐の代宗、粛宗が袈裟を受持し、菩薩戒を受けたことが、在家者の優れた手本として挙げられています。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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