袈裟(けさ)の驚くべき功徳とは? 戯れに着ただけでも仏になれる「仏の衣」の秘密

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:袈裟が持つとされる功徳の中で、袈裟を「仏の皮肉骨髄(ひにくこつずい)」として現代に伝えているのは、主に何の力によるものでしょうか?

  1. 袈裟を縫うために集められた清らかな布の力
  2. 袈裟そのものが三世の諸仏の仏衣であるという性質
  3. 袈裟の着用者が熱心に修行する猛烈な精進の力

原文

如来在世より今日にいたるまで、菩薩声聞(ぼさつしょうもん)の経律(きょうりつ)のなかより、袈裟の功徳をえらびあぐるとき、かならずこの五聖(ごしょう)功徳をむねとするなり。

まことにそれ、袈裟は三世諸仏の仏衣なり。その功徳無量なりといへども、釈迦牟尼仏の法のなかにして袈裟をえたらんは、余仏の法のなかにして袈裟をえんにもすぐれたるべし。

ゆゑいかんとなれば、釈迦牟尼仏むかし因地のとき、大悲菩薩摩訶薩(だいひぼさつまかさつ)として、宝蔵仏(ほうぞうぶつ)のみまへにて、五百大願をたてましますとき、ことさらにこの袈裟の功徳におきて、かくのごとく誓願をおこしまします。
その功徳、さらに無量不可思議なるべし。

しかあればすなはち、世尊の皮肉骨髄いまに正伝するといふは、袈裟衣なり。正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)を正伝する祖師、かならず袈裟を正伝せり。

この衣を伝持し頂戴する衆生、かならず二三生(にさんしょう)のあひだに得道せり。たとひ戯笑(くしょう)のため利益(リヤク)のために身に著(ヂャク)せる、かならず得道因縁なり。


現代語訳

釈尊(お釈迦様)が世にいた頃から今日に至るまで、菩薩や声聞が学ぶ経典や戒律の中から袈裟の功徳を選び上げる際には、必ずこの五つの優れた功徳(五聖功徳)が第一に挙げられます。

まことに袈裟は、過去・現在・未来のすべての仏たちが身に着けている仏の衣であり、その功徳は計り知れないものです。しかし、この釈迦牟尼仏の法の中で袈裟を得た功徳は、他の仏の法で袈裟を得るよりも優れているでしょう。

なぜなら、釈尊が遠い過去の世で菩薩の修行をしていた時、大悲菩薩摩訶薩として宝蔵仏の前で五百の大願を立てましたが、その中で特にこの袈裟の功徳について誓願を起こされたからです。
そのため、その功徳はさらに計り知れないものとなったのです。

このように、釈尊の皮肉骨髄を今日に正しく伝えているものこそ、袈裟の衣なのです。したがって、仏法の真髄(正法眼蔵)を正しく伝える祖師は、必ずこの袈裟を正しく伝えてきました。

この衣を相伝し、大切に頂戴して護持する人々は、必ず次の生、あるいは次の次の生までの間に仏道を悟ることができます。たとえ、ふざけて袈裟を着けたとしても、あるいは自分の利益のために身に着けたとしても、それは必ず仏道を悟る原因(得道因縁)となるのです。


語句説明

  • 菩薩声聞(ぼさつしょうもん)
    大乗仏教の修行者である菩薩と、仏の説法を聞いて修行する声聞のこと
  • 経律(きょうりつ)
    仏の説いた経典と、仏が定めた戒律(僧の生活規範)のこと
  • 五聖功徳(ごしょうくどく)
    袈裟が持つとされる五つの優れた功徳。本節の冒頭で最も重要視されている功徳群
  • 因地(いんに)
    悟りを得る前の修行時代、またはその原因となる過去世
  • 大悲菩薩摩訶薩(だいひぼさつまかさつ)
    釈迦牟尼仏が過去世で修行していた時の名称。大いなる慈悲を持つ菩薩
  • 宝蔵仏(ほうぞうぶつ)
    過去に存在したとされる仏で、釈尊(大悲菩薩)がその前で五百の大願を立てた
  • 正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)
    仏法の真髄、悟りの知恵のこと
  • 戯笑のため利益のため
    袈裟の功徳を信じずに、単に遊女がふざけて着用した、あるいは利己的な目的で着用したということ

詳細な解説

袈裟が持つ「五聖功徳」の源泉

道元禅師は、古来より経典や戒律に説かれてきた袈裟の功徳の精髄として、この「五聖功徳」を挙げ、その中でも釈迦牟尼仏の法脈における袈裟の功徳が、他の仏の教えよりも格段に優れていると強調します。

この特別な功徳の根拠は、釈尊がまだ菩薩であった時、宝蔵仏(ほうぞうぶつ)の前で五百の大願を立てたことにあります。この誓願があったからこそ、釈尊の法の袈裟には、無量不可思議な力が宿ることになったのです。

袈裟は「仏の皮肉骨髄」の正伝

袈裟は単なる衣服ではありません。それは世尊(釈迦牟尼仏)の皮肉骨髄を今日に正しく伝えているもの、すなわち仏法の真髄そのものを象徴する「正法眼蔵」なのです。

したがって、仏祖の法を正しく伝える祖師は、必ずこの袈裟を正しく相伝してきました。袈裟は、師から弟子へと受け継がれる仏法嫡嫡相承(ぶっぽうちゃくちゃくそうじょう)の証しであり、その形(体色量)や作法(著用の法)は、如来から迦葉尊者、そして歴代の祖師へと途切れることなく伝えられてきたものです。

この「正伝の袈裟」を受け継ぐことは、釈尊が直接自分に袈裟を授けてくださったことと同義であり、仏の説法を聞き、仏の光明に照らされ、仏の生活を自らの生活にすることにほかなりません。

驚異的な「得道(とくどう)」の保証

袈裟の功徳は、その着用者の熱心な修行の力(行者の猛利恆修の力)によるものではなく、袈裟自身の神力(じんりき)によるものです。

最も驚くべき点は、この衣を護持し頂戴する衆生は、必ず二三生(次の生か、次の次の生)の間に仏道を悟ると保証されていることです。

さらに、「戯笑(くしょう)のため利益(りやく)のため」に身に着けた者さえも、必ず得道因縁となる、という教えがあります。これは、過去の遊女であった優鉢羅華(うばつらげ)比丘尼が、前世で尼僧の衣(袈裟)を着てふざけた(戯笑を為した)因縁によって、後に迦葉仏の時代に尼僧となり、さらに釈迦牟尼仏の時代に六神通(ろくじんづう)阿羅漢の悟りを得たというエピソードに基づいています。

彼女の例は、単なる悪事を働く者(作悪人)が地獄から出ても再び悪人となるのに対し、戒を受ける因縁(この場合は袈裟を戯れに着たこと)があれば、たとえ破戒し地獄に堕ちたとしても、最終的に道を悟ることを示しています。

このように、袈裟への関心や接触が、たとえ不純な動機や形であっても、未来永劫の悟りへと続く種まきとなるのです。


問いかけとまとめ

袈裟は、仏教徒にとって単なる衣ではなく、「解脱服」、「福田衣」、「金剛の甲冑」 とも称される、無上菩提を成就する護身符子なのです。袈裟を身につけることは、諸仏に加護されることに他ならず、その神力は凡夫には計り知れないものです。

現代を生きる私たちは、袈裟を身に着けることができなくとも、その精神、すなわち仏祖から受け継がれた正法を敬い帰依すること、そしてその功徳を信じ恭敬(くぎょう)の心を持つことが大切です。

仏教の教えに触れ、清らかな心を持つことの貴さを改めて感じてみませんか。


クイズの答え

B. 袈裟そのものが三世の諸仏の仏衣であるという性質

解説:
袈裟は三世諸仏の仏衣であり、そのものは釈尊の皮肉骨髄を今日に正しく伝えているとされます。これは、修行者の個人的な努力(C)とは別に、袈裟そのものが持つ無量不可思議な功徳によるものです。袈裟の功徳は、たとえそれを戯れに扱った者でさえも、未来の成仏へと導く得道因縁となるほどの力を持っているのです。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


法衣袈裟のお悩み解決!
法衣袈裟コンシェルジュ 四代目ナオシチに
いつでもなんなりとご相談ください
合掌
「袈裟功徳」を読む袈裟から仏教を学ぶ直七ブログコラム
ナオシチブログ