袈裟がもたらす究極の功徳:若返りの奇跡と仏の保証

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:宝蔵如来の讃嘆を聞いた大悲菩薩に起こった奇跡とは?

  1. 菩薩の体から五色の光が放たれた。
  2. 菩薩の姿が20歳の童子に変わった。
  3. 仏の黄金の臂が天に昇った。

原文の提示

「善男子、爾(ソ)の時に宝蔵如来、金色(コンジキ)の右臂(ウヒ)を申(ノ)べて、大悲菩薩の頂きを摩(ナ)でて、讃(ホ)めて言(ノタマハ)く。

 『善哉善哉、大丈夫、汝が言ふ所は、是れ大珍宝なり、是れ大賢善なり。
汝、阿耨多羅三藐三菩提を成(ジョウ)じ已(オワ)らんに、是(コ)の袈裟服は、能く此の五聖(ゴショウ)の功徳を成就して、大利益を作(ナ)さん』。

善男子、爾の時に大悲菩薩摩訶薩、仏の讃歎したまふを聞き已りて、心に歓喜を生じ、踊躍(ユヤク)すること無量なり。

因みに仏、此の金色の臂を申ぶるに長指合縵(ゴウマン)にして、其の手の柔輭(ニュウナン)なること、猶ほ天衣(テンエ)の如し。其の頭を摩(ナ)で已りて、其の身即ち状(カタチ)を変じて童子二十歳の人の如し。

善男子、彼(カ)の会(エ)の大衆(ダイシュ)、諸天、龍神、乾闥婆(ケンダッバ)、人(ニン)及び非人、叉手(シャシュ)し恭敬し、大悲菩薩に向ひて種々の華を供養し、乃至伎楽(ギガク)して之を供養せり。
復た種々に讃歎し已りて、黙然(モクネン)として住(ジュウ)せり。」


現代語訳と背景

善男子よ、その時宝蔵如来(ほうぞうにょらい)は、金色(こんじき)の右腕を伸ばし、大悲菩薩(だいひぼさつ)の頭を撫でて、褒めたたえて言いました。

「善いかな、善いかな、立派な男子よ。お前の願ったことは、この上ない宝であり、この上なく優れた善である。
お前が無上の悟り(阿耨多羅三藐三菩提)を成し遂げたならば、この袈裟の衣は、五つの優れた功徳を成就し、人々に大きな利益をもたらすであろう」と。

善男子よ、この時、大悲菩薩摩訶薩(後の釈尊)は、仏(宝蔵如来)の讃嘆を聞き、計り知れないほどの歓喜に満たされ、喜び踊りました。

宝蔵仏がその金色の腕を伸ばして頭を撫でた際、その手は指が長く水かき状の膜(長指合縵)を持ち、天人の衣のように柔らかでした。仏が頭を撫で終えると、大悲菩薩の姿はたちまち二十歳の若者のように変化しました。

その場に居合わせた大勢の会衆、諸天、龍神、乾闥婆(けんだつば)などの人間や人間でないものたち(非人)は、胸の前で手を組み(叉手)、恭しく大悲菩薩を敬いました。
そして、様々な花を供養し、伎楽(ぎがく)を奏でて祝福した後、様々に讃嘆し、静かに沈黙したのでした。


語句説明

  • 宝蔵如来(ほうぞうにょらい):過去世に存在した仏。大悲菩薩(釈尊の前身)の願いを賛嘆し、彼の成仏を予言(授記)した
  • 大悲菩薩摩訶薩(だいひぼさつまかさつ):釈迦牟尼仏が過去世で行を積んでいた時の呼び名。宝蔵仏の前で五百の大願を立てた
  • 阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい):仏教におけるこの上ない最高の悟り、無上正等正覚のこと
  • 五聖の功徳(ごしょうのくどく):袈裟に備わっている五つの優れた功徳。袈裟の功徳を数え上げる際に必ず第一に挙げられる
  • 長指合縵(ごうまん):仏の身体に見られる三十二相の一つで、指が長く、指と指の間に水かき状の膜がある状態
  • 乾闥婆(けんだつば):帝釈天に仕える伎楽(音楽)の神
  • 叉手(しゃしゅ):胸の前で手を組む敬意を表す作法

詳細な解説

袈裟は成仏を保証する「仏の衣」

大悲菩薩(釈尊の前身)が宝蔵如来に誓願を立てた内容は、袈裟に帰依するすべての衆生を救うというものでした。

この袈裟の五聖の功徳は、その人が重い戒を犯したり、誤った考えを持ったり、三宝を軽んじるような重罪を重ねた者であっても、もし一瞬でも袈裟に対して敬いの心(恭敬の心)を抱けば、その者が将来仏となること(記莂(きべつ))を保証し、仏道から退転させないというものです。
もしこの保証が叶わなければ、大悲菩薩は自らが仏の悟りを成就しない、と誓っているほどです。

袈裟は、解脱服や福田衣とも呼ばれ、釈迦牟尼仏の皮肉骨髄を今日に正しく伝えているものだとされます。
この袈裟を護持する者は、たとえ戯れや自分の利益のために身に着けたとしても、必ず三生(次の生か、次の次の生)の間に仏道を悟る因縁となるほど、計り知れない功徳があるのです。

宝蔵如来の「灌頂」と身体の変化

宝蔵如来が、大悲菩薩の頭を金色の右臂で撫でた(摩(な)でた)行為は、仏教において授記(じゅき)や灌頂(かんじょう)と呼ばれる重要な儀式を象徴しています。

如来の手は、長指合縵という特徴(仏の三十二相の一つ)を持ち、天衣(てんえ)のように柔らかだったと描写されています。この仏の慈愛に満ちた手に触れられることで、大悲菩薩は一瞬にして姿を変じ、二十歳の若者のような姿になりました。

これは、誓願の達成が保証され、修行が新たな段階に入ったことを示唆する、劇的な奇跡の瞬間です。

宇宙を挙げての祝福

この大悲菩薩の誓願成就と変身を、会衆は熱狂的に祝いました。

その場に集まっていた大衆には、人間(人)だけでなく、諸天(しょてん)(天界の神々)、龍神、乾闥婆(伎楽の神)など人間ではない者(非人)も含まれていました。彼らは皆、叉手(しゃしゅ)(合掌して手を組む恭敬の姿勢)で大悲菩薩に敬意を表し、種々の華を供養し、伎楽(音楽)を奏でて祝福しました。そして、最大限の讃嘆を終えた後、彼らは黙然(もくねん)としてその場に留まったと結ばれています。


問いかけとまとめ

袈裟の功徳は、修行者の厳しい努力(猛利恒修)による力だけではなく、袈裟そのものが持つ不思議な神力によるものだと説かれます。袈裟を身に着けること、あるいは敬う心を持つことは、私たちが最高の悟り(無上菩提)に至るための「護身の札」となるのです。

私たちも、この袈裟の教えに触れ、日々の生活の中で仏法を敬う心を持つことが、いかに大きな宿善(しゅくぜん)の力であるかを再認識し、その功徳を活かしていくことが大切ではないでしょうか。

あなたは、袈裟が持つこのような絶対的な力を、日々の生活の中でどのように意識して過ごされますか?


クイズの答え

B. 菩薩の姿が20歳の童子に変わった。

解説:
宝蔵如来に頭を撫でられた大悲菩薩(釈迦牟尼仏の前身)は、その偉大な誓願が認められた証として、たちまち二十歳の若者の姿に変身しました。この奇跡は、仏の金色の臂(うひ)の長指合縵という特殊な身体的特徴を持つ柔らかな手(天衣の如し)によってもたらされました。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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