直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。
クイズ: 飢えや貧窮に苦しむ衆生が袈裟のわずかな一部(少分、乃至四寸)を得た場合、得られる功徳として原文に示されていることは次のうちどれでしょう?
- 重い戒を犯しても罪がすぐに消滅する
- 飲食に満ち足り、その願いが速やかに成就する
- 諸仏から「無上菩提を成就する」という予言(記莂)を受ける
原文
若し衆生有って、飢渇の為に逼(セ)められ、若しは貧窮(ビングウ)の鬼神、下賤(ゲセン)の諸人、乃至餓鬼の衆生、若し袈裟の少分、乃至四寸を得ば、即ち飲食(オンジキ)充足することを得、其の所願に随って、疾(ト)く成就することを得ん。
現代語訳
もし、飢えと渇きに責められる人々がおり、あるいは貧窮の鬼神や身分の低い人々、さらには餓鬼(がき)となった人々までもが、もし袈裟の一部、わずか四寸(約12cm)ほどでも得ることができれば、すぐに食べ物や飲み物に満たされることができ、その人の願いは速やかに成就するでしょう。
語句説明
- 衆生(しゅじょう):命あるすべての生き物
- 鬼神(きじん):人間に災いをもたらす鬼や神
- 餓鬼(がき):飢えや渇きに苦しみ、飲食が満たされない世界にいるもの
- 袈裟(けさ):仏弟子であることの目印(標幟)であり、解脱服や福田衣などとも呼ばれる
- 少分(しょうぶん):ごく一部、わずかな部分
- 飲食充足(おんじきじゅうそく):食べ物や飲み物が満たされること
- 成就(じょうじゅ):願いが実現すること、悟りを得ること
詳細な解説
袈裟功徳の普遍性と超越性
この教えの驚くべき点は、救済の対象が人間社会の貧困者や下賤な人々に留まらず、餓鬼や貧窮の鬼神といった「人間でない者」にまで及んでいることです。
これは、袈裟の持つ力が、物理的な現実世界を超越した霊的な領域にも影響を及ぼすことを示しています。
袈裟の一部(少分、四寸)を持つだけで、物質的な「飲食充足」と、精神的な「所願成就」の両方が得られるというのは、単に喜捨や施しを受けるという現実的な話ではなく、袈裟そのものが仏性の象徴であり、無上の悟り(無上菩提)への確実な護符となるからです。
袈裟は仏法そのもの
『正法眼蔵』では、袈裟は単なる衣類ではなく、「仏身なり、仏心なり」とされ、解脱服、福田衣など、多くの尊い別名を持っています。
袈裟は、煩悩の毒矢も害することができない堅固な甲冑にも例えられ、これを身に着けることで悪しき行いが除かれ、善行が増していくとされます。
袈裟を護持することは、仏祖が代々親しく伝えてきた正しい法(衣法)を受け継ぐことそのものです。そのため、袈裟を身に着ける、あるいは一部を見るだけでも、その人は仏の加護によって無上の悟りの功徳が円満すると説かれています。袈裟の神力は凡夫や賢者にも計り知れない不思議な力であり、修行者の精進の力以上に、袈裟そのものの功徳によるものであると強調されています。
袈裟と縁を結ぶことの重要性
たとえ冗談や戯れのために袈裟を着けたとしても、それは必ず仏道を悟る因縁となると説かれています。
また、在家の人々(国王、大臣、居士、婦女など)でも袈裟を受けて護持することは、大乗の教えの究極の秘訣であり、古代インドや中国、そして日本においても聖徳太子や聖武皇帝などが袈裟を受持した優れた行跡があります。
このように、袈裟と縁を結び、それを尊重し敬う心があれば、その功徳は広大無量であり、善根の種を蒔き、無上の悟りの妙果を得る確実な道となるのです。
問いかけとまとめ
袈裟の持つ不思議で広大な功徳は、私たちに、形を通して本質に触れることの大切さを教えてくれます。
この教えは、私たちが遠い末法の世に生きる今、どのように仏道に志し、何を「一法一善」として身心に染めるべきかを示唆しています。袈裟を「仏祖の正伝」として敬い、その教えを学ぶことが、私たちが仏の皮肉骨髄を正伝することに他なりません。
袈裟の「少分、乃至四寸」に宿る無限の力を信じ、日々の生活の中で、仏道への恭敬(くぎょう)の心を忘れずに保ちたいものですね。
クイズの答え
B. 飲食に満ち足り、その願いが速やかに成就する
解説: 袈裟の功徳その三では、飢渇に苦しむ衆生が袈裟の一部(少分、四寸)を得た場合、飲食が満たされ(飲食充足)、その願いが速やかに成就すると説かれています。
これは単なる物質的な救済だけでなく、成仏へ向けた不退転の力を得ることを意味しています。