仏身であり仏心:袈裟に込められた多様な呼び名とその深い意味

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:袈裟が「仏身であり仏心」と言われるように、仏教において非常に重要な役割を果たすのはなぜでしょうか?

  1. 仏の身体と心だから
  2. 僧侶の階級を示すものだから
  3. 寒さから身を守るためだから

答えは記事の最後に!


原文

おほよそしるべし、袈裟はこれ諸仏の恭敬 (クギョウ) 帰依しましますところなり。

仏身なり、仏心なり。

解脱服 (ゲダップク) と称し、福田衣 (フクデンエ) と称し、無相衣と称し、無上衣と称し、忍辱衣 (ニンニクエ) と称し、如来衣と称し、大慈大悲衣と称し、勝幡衣 (ショウバンエ) と称し、阿耨多羅三藐三菩提衣と称す。
まさにかくのごとく受持頂戴すべし。かくのごとくなるがゆゑに、こころにしたがうてあらたむべきにあらず。

現代語訳

まず知ることです。袈裟は、諸仏が敬い帰依されているものであり、仏の身体であり、仏の心なのです。

また、煩悩を解脱する服とも言い、福をもたらす衣(福田衣)とも言い、執着を離れた無相の衣とも言い、この上なく優れた功徳を生む衣とも言い、忍耐して恨みの心を起こさない衣とも言い、如来の衣とも言い、大きな慈悲の衣とも言い、魔を下す衣(勝幡衣)とも言い、この上ない仏の悟りの衣とも言うのです。

まさにこのように心得て袈裟を受け、頭上に頂いて敬いなさい。袈裟とは、こういうものですから、人の意向に従って改めてはならないのです。

語句説明

  • 恭敬(クギョウ): 敬い、尊敬すること
  • 解脱服(ゲダップク): 煩悩から解放される服
  • 福田衣(フクデンエ): 福をもたらす田のような衣
  • 無相衣: 執着を離れ、姿・形にとらわれない真実を表現する衣
  • 無上衣: この上なく優れた功徳を生む衣
  • 忍辱衣(ニンニクエ): 忍耐して恨みの心を起こさない衣
  • 如来衣: 仏(如来)が身に着ける衣
  • 大慈大悲衣: 大きな慈悲の心を表す衣
  • 勝幡衣(ショウバンエ): 魔を降して勝利する旗印の衣
  • 阿耨多羅三藐三菩提衣: この上ない仏の悟り(阿耨多羅三藐三菩提)を表す衣
  • 受持(ジュジ): 受け取って護り保つこと
  • 頂戴(チョウダイ): 頭上に頂き、敬うこと

詳細な解説

袈裟は仏法そのもの

袈裟は、単なる僧侶の衣服ではありません。仏法に帰依する者が身につけるべきものであり、また師から弟子へと法が正しく伝えられたことの証明でもあります。

そのため、袈裟は仏法そのもの、さらには仏の身体や心であるとまで称されるのです。
これは、袈裟が仏教の真髄を具現化したものであるという深い理解に基づいています。

袈裟に込められた功徳と願い

袈裟には様々な呼び名がありますが、それぞれに深い功徳と願いが込められています。

  • 解脱服: 袈裟を身につけることで、過去の悪行による障り、貪り・怒り・愚かさなどの煩悩による障り、悪報による苦しみなど、あらゆる苦悩から解脱できるとされます。例えば、龍が袈裟の糸一筋を得れば三つの苦悩を免れ、牛が袈裟に一角を触れれば罪が消滅し成道したという逸話が伝えられています。
  • 福田衣: 福をもたらす田に譬えられ、仏道の芽を育み、多くの福徳を生み出す力があるとされます。
  • 無相衣: 執着を離れた、姿や形にとらわれない真実を表現する衣です。
  • 勝幡衣: 魔を降して必ず勝利する旗印のようであり、袈裟を身につける者は、龍魚や悪鬼の難、雷電の恐怖からも守られると言われています。

これらの呼び名が示すように、袈裟には不思議な神力(じんりき)が具わっており、凡夫や賢者にも計り知れない力があるとされています。
袈裟は、ただの呼称ではなく、仏の教えの一部として、その絶大な功徳が説かれているのです。

形がもたらす本質

袈裟は、絹や麻綿といった素材の種類や、有限・無限、有相・無相といった具体的な姿形を超えた存在であると説かれます。
例えば、商那和修尊者や鮮白比丘尼の伝説では、生まれた時から身につけていた俗服が、出家受戒によって袈裟に変じたとされ、これは袈裟が単なる布ではなく、生まれながらに備わる仏性の象徴であると解釈されます。

道元禅師は、袈裟を身につけるという「」が、修行者の内面や本質を形成する上で極めて重要であると考えています。
心に直接働きかけることが難しい場合でも、形から入ることで自然に修行の姿が生じ、内面が作られていくのです。たとえ戯れや自己の利益のためであっても、一度袈裟を身につければ、それは必ず仏道を悟る因縁となるとまで言われています。

不変の伝承

袈裟は、個人の意向で勝手に変えるべきものではありません。
釈迦牟尼仏から摩訶迦葉へと、そして嵩岳の達磨大師から中国の六祖慧能禅師に至るまで、その「体色量」(素材、色、形、大きさ)も含め、歴代の祖師によって正しく伝えられてきた伝統の袈裟を受け継ぐことが肝要とされます。この正伝の袈裟こそが、仏祖の皮肉骨髄を正しく伝えるものとされているからです。


問いかけやまとめ

袈裟は、私たちが普段目にする「僧侶の服」というイメージをはるかに超え、仏教の深い教え、精神、そして悟りへの道そのものを象徴する存在であることがお分かりいただけたでしょうか。

その多種多様な呼び名一つ一つに、煩悩からの解脱、福徳の成就、魔の克服、そして究極の悟りへの願いや慈悲の心が込められています。

私たちも袈裟を通して、形が持つ意味伝統の重み、そして目に見えるものだけでなく、その奥に秘められた本質を深く考えるきっかけとしてみませんか。

日々の生活の中で、何気なく触れるもの、身につけるものにも、もしかしたら深い意味や歴史が隠されているかもしれません。

クイズの答え

A. 仏の身体と心

解説: 袈裟は、諸仏が敬い帰依するところであり、仏法に帰依する者が身につけるべきものであることから、仏法そのもの、仏の身体であり仏の心であるとされています。
これは単なる衣服ではなく、仏教の精神的な真髄を象徴する極めて重要な存在として位置づけられているためです。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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合掌
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