【禅の核心】釈尊から六祖慧能へ──途絶えることなき「衣と法」の継承

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

中国に禅宗を伝えたとされる、釈迦牟尼仏から数えて二十八代目の祖師は誰でしょう?

  1. 六祖慧能
  2. 達磨大師
  3. 弘忍禅師

禅宗における「衣」と「法」の特別な意味

禅宗において、「衣」、特に「袈裟(けさ)」は単なる僧侶の衣服ではありません。それは、釈迦牟尼仏から連綿と受け継がれてきた仏法の正統な血脈を示す象徴であり、「法」、つまり仏の悟りの内容そのものを体現すると考えられています。

この「衣法」が正しく伝承されることこそ、禅の精神が時代を超えて生き続けるための最も重要な要素なのです。

原文で確認する「正伝の衣法」

それでは、今回テーマとなっている「仏仏祖祖正伝の衣法」に関する記述を、資料から見てみましょう。

仏仏祖祖正伝(ショウデン)の衣法(エホウ)、まさしく震旦国に正伝することは、嵩岳の高祖のみなり。高祖は、釈迦牟尼仏より第二十八代の祖なり。西天(サイテン)二十八伝、嫡嫡あひつたはれり。二十八祖、したしく震旦にいりて初祖たり。震旦国人五伝して、曹谿にいたりて三十三代の祖なり。これを六祖と称す。第三十三代の祖大鑑禅師、この衣法を黄梅山にして夜半に正伝し、一生護持、いまなほ曹谿山宝林寺に安置せり。

現代語訳

仏から仏へ、祖師から祖師へと正しく伝えられてきた衣と法が、中国に間違いなく伝えられたのは、嵩山(すうざん)の高祖(こうそ)、すなわち達磨大師(だるまだいし)ただ一人である。

達磨大師は、釈迦牟尼仏から数えて二十八代目の祖師であり、インドにおいて二十八代にわたって、嫡子によって正しく受け継がれてきた。その二十八番目の祖師が、直接中国に入り、中国における最初の祖師となったのである。

その後、中国で五代を経て、曹谿(そうけい)に至り、そこで三十三代目の祖師となった。この方を六祖慧能(ろくそえのう)と称する。その三十三代目の祖師である大鑑禅師(慧能)は、黄梅山(おうばいさん)において、夜中に密かにこの衣と法を正しく伝承し、生涯にわたって護持し、その衣は今もなお曹谿山の宝林寺(ほうりんじ)に安置されている。

語句説明

  • 仏仏祖祖正伝(ぶつぶつそそしょうでん): 仏から仏へ、祖師から祖師へと、途切れることなく正しく教えが伝えられてきた系統。
  • 衣法(えほう): 仏法の真髄が込められた「衣(袈裟)」と、言葉や文字では表現しきれない悟りの内容である「法」。
  • 震旦国(しんたんこく): 中国の古称。
  • 高祖(こうそ): 宗派や学派の創始者を敬っていう言葉。ここでは禅宗の初祖である達磨大師を指す。
  • 西天(サイテン): インドのこと。
  • 嫡嫡相伝(ちゃくちゃくそうでん): 嫡子から嫡子へと、血筋を通して(ここでは法統を通して)正しく受け継がれること。
  • 曹谿(そうけい): 中国の地名。禅宗六祖慧能が拠点を置いた場所。
  • 六祖慧能(ろくそえのう): 中国禅宗の第六祖。禅の精神を大きく発展させた重要な人物。
  • 大鑑禅師(だいかんぜんじ): 六祖慧能の諡(おくりな)。
  • 黄梅山(おうばいさん): 中国の山名。禅宗五祖弘忍(ぐにん)が住した寺があった場所。
  • 宝林寺(ほうりんじ): 広東省にある寺院。六祖慧能が住し、その法衣が今も安置されていると伝えられる。

詳細な解説:禅の正統な流れ

この短い一節には、禅宗の歴史における非常に重要な出来事が凝縮されています。ポイントは、釈迦牟尼仏から達磨大師、そして六祖慧能へと、特別な「衣」と「法」が直接的に、そして秘密裏に伝えられたという点です。

  • インドから中国へ:禅宗はインドで生まれ、多くの祖師を経て、達磨大師によって初めて中国に伝えられました。資料では、達磨大師が釈迦牟尼仏から数えて二十八代目の祖師であることが明記されています。これは、禅宗が単なる新しい仏教の一派ではなく、釈尊の教えを正統に受け継ぐものであるという強い意識を示しています。
     
  • 中国における発展と六祖慧能:達磨大師から数えて五代目の祖師である弘忍(ぐにん)の下で、禅は大きく発展しました。その弟子の中で最も悟りの境地を開いたとされるのが慧能であり、弘忍は夜中に密かに慧能に「衣法」を授け、禅宗の正統な後継者としたのです。この伝承は、形式的な地位や学識ではなく、直接的な心の伝達、悟りの体験こそが仏法の真髄であるという禅の核心的な思想を象徴しています。
     
  • 象徴としての袈裟:伝法の際に授けられる「衣」、すなわち袈裟は、単なる衣類ではなく、仏祖の精神が宿る特別な象徴として扱われてきました。六祖慧能に受け継がれたその袈裟は、正統な法脈の証として、大切に保管されてきたのです。

問いかけとまとめ

この記事を通して、禅宗における「仏仏祖祖正伝の衣法」の重要性をご理解いただけたでしょうか。釈尊から達磨大師、そして六祖慧能へと繋がるこの特別な伝承は、禅の精神が今に息づく根源となっています。

私たち現代に生きる者が禅に触れるとき、この途絶えることなき「衣と法」の流れを意識することは、より深い理解へと繋がるはずです。皆さんも、坐禅を通して、あるいは日々の生活の中で、この静かで力強い禅の精神を感じてみてはいかがでしょうか。

クイズの正解は「B. 達磨大師」 でした。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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合掌
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