直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。
クイズ:袈裟の力に関する記述で、災難からの守護の例として、「我れ今 略して十勝利を讃ず」という一節の趣旨に照らして、誤っているものはどれでしょう?
- 龍が袈裟の糸一筋を持てば、天敵に食べられない
- 袈裟を持つ人が海を渡っても、龍魚や悪鬼の難を恐れない
- 袈裟を身に着ければ、修行者は寒熱や毒虫の苦痛を一切感じなくなる
原文
「我れ今 略して十勝利を讃ず、歴劫(リャッコウ)に広説すとも辺(ホトリ)有ること無けん。
若し龍有りて身に一縷を披せば、金翅鳥王(コンジチョウオウ)の食(ジキ)を脱(マヌガ)るることを得ん。
若し人海を渡らんに此の衣を持せば、龍魚諸鬼の難を怖れじ。
雷電霹靂(ライデンヒャクリキ)して天の怒らんにも、袈裟を披(キ)たらん者は恐畏(オソレ)無けん。白衣(ビャクエ)若し能く親しく捧持せば、一切の悪鬼能く近づくこと無けん。
若し能く発心(ホッシン)して出家を求め、世間を厭離(エンリ)して仏道を修せば、十方の魔宮(マグウ)皆振動し、是の人速やかに法王の身を証せん。」
現代語訳
「私は今、袈裟の十の優れた利益(十勝利)を要約して褒めたたえるが、これは非常に長い時間(歴劫)をかけて詳しく説いたとしても、決して説き尽くすことはできないだろう。
もし龍が、袈裟の一筋の糸(一縷)を身に着けたならば、天敵である巨大な猛鳥・金翅鳥王に食べられる難から逃れることができる。
もし人が海を渡る時にこの袈裟を持っていれば、龍魚や様々な悪鬼による災難を恐れることはない。
雷や稲妻が激しく鳴り響き、天が怒るような激しい苦難に遭っても、袈裟を着た者は恐れを抱かないであろう。
在家の者(白衣)であっても、もし親しく敬って袈裟を持てば、すべての悪鬼は近づくことができなくなる。
そして、もし心を発して出家を求め、世間を厭い離れて仏道を修行したならば、あらゆる方角にある悪魔の住み家(魔宮)は皆振動し、この人は速やかに仏身(法王の身)を悟ることができるだろう。」
語句説明
- 十勝利(じっしょうり):袈裟を身につけることで得られる十の優れた利益や徳目
- 金翅鳥王(コンジチョウオウ):龍を常食とする伝説上の猛禽、迦楼羅に同じ
- 白衣(ビャクエ):出家者ではない、在家の信者
- 厭離(エンリ):世間を厭い、離れること、執着を捨てること
- 魔宮(マグウ):悪鬼が住む場所、魔が支配する世界
- 法王の身(ホウオウノシン):仏の悟り(無上菩提)を成就した、仏身そのもの
詳細な解説
1. 袈裟が象徴する「絶対的な真実」
袈裟は、単なる布ではありません。それは「仏の身体であり、仏の心」そのものであり、煩悩から解脱させる「解脱服」や、福を生む「福田衣」とも呼ばれます。袈裟は、過去・現在・未来のすべての仏たちが正しく伝えてきたものであり、これを着用することは、仏たちの皮肉骨髄を正しく伝えることと同じであるとされます。
2. 袈裟がもたらす広大な救済
偈文に説かれる龍と金翅鳥王の話は、袈裟が持つ守護の力を象徴しています。龍は袈裟の糸一筋を得るだけで災厄を免れ、人が海を渡る際の難を避け、また激しい苦難(雷電霹靂)に直面しても、袈裟を身に着けた者は恐れないと説かれています。
これは、袈裟を身につけ、その教えを心に念じることで、現実生活におけるいかなる事態も「単なる様相の一つにすぎない」と認識する仏法の真理に気づき、心が安定するため、苦難を乗り越えられるという教えです。袈裟は、私たちを煩悩の毒矢から守る「堅固な金剛の甲冑」のようなものです。
3. 在家者への功徳と成仏への保証
袈裟の功徳は、出家者に限定されません。在家信者(白衣)が恭敬の心を持って袈裟を護持することは、大乗仏教の究極の秘訣です。在家者が袈裟を敬い持てば、一切の悪鬼は近づくことができません。
さらに、その功徳は非常に大きく、袈裟を「戯れ」に身に着けただけでも、それは必ず仏道を悟る(得道)ための良い因縁になるとされています。ましてや、清浄な信心をもって仏道を志し、袈裟を護持すれば、その功徳は広大で計り知れないものです。修行者が勇猛に精進する力ではなく、ただ袈裟の持つ神力によって、速やかに悟り(法王の身)を証することができる、と断言されています。
まとめ
袈裟の「十勝利」に説かれる功徳は、私たちが日々の生活の中で直面する様々な困難や迷いに対し、仏道という確かな依りどころを与えてくれるものです。袈裟の力は、修行者の内面的な努力(猛利恆修)を超え、そのもの自体が持つ不思議な神力によるものとされています。
それは、私たちが形式(形)を大切にし、仏祖が代々伝えてきた袈裟という「衣」を敬うことによって、仏法という「心」を受け取れるということです。たとえあなたが在家者であっても、仏道を志すならば、袈裟の教えを心に留め、その功徳を喜ぶべきです。
この不思議で広大な功徳を、私たちはどのように日々の生活に活かすことができるでしょうか。
クイズの答え
答え:C
解説:
AとBは、袈裟の糸一本や衣を持つことで、龍を食べる金翅鳥王や、海上の龍魚諸鬼の難を免れるという守護の功徳が説かれています。
Cについては、袈裟は寒熱や毒虫から身を守り、安穏に修道できるとされますが、「雷電霹靂」の難を「恐畏無けん」(恐れない)とあるように、物理的な苦痛を消滅させるのではなく、その苦難を乗り越える不動の心(道心堅固)や守護の力が得られると説かれています。
