仏教の伝統「袈裟功徳」に学ぶ、たった一枚の布に宿る十の不思議な力

直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。

クイズ:袈裟の「十勝利」の中で、身に着けることで「遠離」(遠ざける)されるものとして、経典に具体的に言及されていないのは次のうちどれでしょうか。

  1. 羞恥の心
  2. 寒さや暑さ
  3. 人からの悪口や嘲笑

原文

世尊(せそん) 智光(ちこう)比丘(びく)に告げて言(い)はく、

「法衣(ホウエ)は十勝利(ジュッショウリ)を得るなり。

一つには、能(よ)く其(そ)の身を覆うて、羞恥(しゅうち)を遠離(オンリ)し、慚愧(ざんぎ)を具足して、善法を修行す。

二つには、寒熱(かんねつ)および蚊蟲(ブンチュウ)悪獣毒蟲(ドクチュウ)を遠離して、安穏(あんのん)に修道(シュドウ)す。

三つには、沙門(しゃもん)出家(しゅっけ)の相貌(そうみょう)を示現(ジゲン)し、見る者 歓喜して、邪心(じゃしん)を遠離す。」


現代語訳

釈尊(世尊)は、修行僧である智光比丘に教えられました。

「袈裟(法衣)を身に着けることで、十の優れた利益(十勝利)を得ることができます。

一つ目には、その身を覆うことで、恥ずかしい思い(羞恥)を遠ざけ、自らの罪や過ちを恥じる心(慚愧)が備わり、善き法(仏道)を修行することができる。

二つ目には、暑さや寒さ、また、蚊、悪獣、毒を持つ虫などから身を守り、安らかに仏道を修めることができる。

三つ目には、出家僧の姿(相貌)をはっきりと示すことで、その姿を見た人々は皆、喜びを感じ、心の中の悪い考え(邪心)を遠ざけることができる。」


語句説明

  • 法衣(ホウエ): 仏道修行者が身に着ける衣服。特に「袈裟」を指し、仏法を象徴する
  • 十勝利(ジュッショウリ): 袈裟を着用することで得られる十種類の優れた利益
  • 慚愧(ザンギ): 仏教における重要な善行の一つ。自らの悪事を恥じ、改めようとする清らかな心
  • 沙門(しゃもん): 出家して仏道を修行する者のこと。比丘とも呼ばれる

詳細な解説

1. 身体を覆い、内面を整える功徳
袈裟の最初の功徳は、「羞恥を遠離し、慚愧を具足する」という、内面的な修養に関わるものです。身を覆い隠すことは、単に裸を恥じるという世俗的な羞恥心を取り去るだけでなく、袈裟という清らかな法を身に着けることで、自らの行動を律し、悪事を深く恥じる心(慚愧)を強固にします。

これは、形が内面を整えるという仏教の教え(行持)を体現しています。修行者の内側から湧き出る勇猛で絶え間ない修行の力(猛利恆修)は、袈裟という清らかな「形」を身にまとうことによってこそ自然に生じてくるものだ、と考えられているのです。

2. 現実の脅威から修行を守る功徳
二つ目の功徳は、修行生活における現実的な保護の役割です。袈裟は、寒暖から身を守るだけでなく、蚊、悪獣、毒虫といった自然界の脅威からも修行者を遠ざけ、安穏に仏道を修める助けとなります。

また、袈裟は「甲冑(かっちゅう)」にも喩えられ、煩悩の毒矢が害することをできないように、修行者を守る強力な「護身符子」となることが説かれています。

3. 他者へ教化の種を蒔く功徳
三つ目の功徳は、袈裟が持つ外側への影響力です。袈裟は「沙門出家の相貌を示現」し、その姿を見た人々(見る者)は、心から喜び(歓喜して)、心に巣食う邪心を遠ざけることができるとされます。

袈裟は、仏弟子の目印(標幟)であり、人々がその姿を見ることは、仏法の清浄さに触れることと同義です。袈裟は「福田衣(ふくでんえ)」とも呼ばれ、福を与える田に喩えられます。袈裟を着けた者を恭敬(うやまう)したり、その袈裟の一部をかすかに見ることさえも、その人に成仏への道を保証する力(不退転の力)を与えるという、不思議な神力を具えているのです。

この袈裟の持つ功徳は、修行者の修行の深さに関わらず、袈裟そのものの力によるものです。それゆえに、仏道に志した者(発心)は、貴賎や賢愚に関わらず、急いで袈裟を受持(護持)し、仏道の種を植えるべきだと説かれています。


まとめ

袈裟の「十勝利」は、目に見える形(法衣)が、目に見えない精神や功徳を支え、周囲に善い影響を広げていくという仏教の真理を教えてくれます。

我々は「辺地(へんち)」にある末法の世に生まれましたが、袈裟という仏祖が親しく伝えてきた教え(衣法)に触れることができたのは、過去世の善根(宿善)のおかげであり、大きな喜びであるとされます。

私たち自身も、日々の生活の中で、袈裟の教えのように「形」を大切にすることで、自らを律し、功徳を積み重ねることができます。たとえば、丁寧に掃除をする、誰にも見られていなくても約束を守るなど、小さな「形」への恭敬(うやまい)が、やがて悟りの種子となって成長するでしょう。

袈裟の功徳が修行者の能力によるものではなく、袈裟そのものの神力であるように、あなたが心を込めて行った「善の形」は、自らの力を超えて、広大無量の功徳を成就させるのです。


クイズの答え

C. 人からの悪口や嘲笑

解説:
袈裟の十勝利の最初の三つで「遠離」すると具体的に言及されているのは、一つ目では「羞恥」(Aに該当)、二つ目では「寒熱および蚊蟲悪獣毒蟲」(Bに該当)です。三つ目では「邪心」を遠離させると説かれていますが、人からの悪口や嘲笑といった社会的な敵意に対する直接的な防御は、この三つの中には含まれていません。ただし、袈裟の功徳全体としては、悪鬼が近づかないなどの防御的な利益も説かれています。

この記事を書いた人

直七法衣店 四代目 川勝顕悟


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