直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。
クイズ:釈迦が自らの成仏を賭して誓った、この誓願は、袈裟の何という功徳に関連していますか?
- 十の勝利 (十勝利)
- 五つの聖なる功徳 (五事の聖功徳)
- 三つの衣 (三衣)
原文
世尊、若し我が袈裟、是(カク)の如く五事の聖(ショウ)功徳を成就すること能はずんば、則ち十方世界、無量無辺阿僧祇(アゾウギ)等の現在の諸仏を欺誑(ゴオウ)すと為(ナ)す。
未来にも応(マサニ)に阿耨多羅三藐三菩提を成就して、仏事を作(ナ)すべからず。
善法を没失(モッシツ)し、必定して外道を破壊(ハエ)すること能はじ。』
現代語訳
(大悲菩薩である私、後の釈尊は宝蔵仏に対して)「世尊よ、もし私の袈裟が、このように五つの優れた功徳を成就できなければ、私はすべての世界の数えきれない仏たちを欺くことになります。
そうであれば、私は未来において、無上の悟り(仏の悟り)を成就して人々を導くことはしません。なぜなら、善き法を失い、きっと真理から外れた教え(外道)を打ち壊すことができなくなるからです。」
語句説明
- 世尊(せそん):世の中で最も尊い方。この文脈では、釈尊の前世の師である宝蔵仏を指す
- 五事の聖功徳(ごじのしょうくどく):袈裟に備わっている五つの優れた功徳。この誓願の基となった重要な功徳群で、釈尊の五百大願の中に含まれていた
- 阿僧祇(あぞうぎ):数えきれないほど多いこと。無量無辺と同じ意味で、膨大な世界を指す
- 欺誑(ごおう):あざむくこと。約束を違えること
- 阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい):この上なく正しい完全な悟り。仏の悟りそのもの
- 善法を没失し(ぜんぽうをモッシツし):善き教えや功徳を失ってしまうこと
- 外道を破壊(はえ):仏教の真理から外れた教えや、誤った思想を打ち破ること。袈裟には悪を制し、魔を降す力があるとされる
詳細な解説
袈裟の功徳は成仏への絶対保証
釈尊は過去世、大悲菩薩であった時、宝蔵仏のもとで五百の大願を立てました。この誓願は、その五百大願の中でも、特に袈裟の功徳について述べられたものです。
袈裟が授けられる行為は、それほどに確かな成仏への保証なのだ、ということがこの誓いの根幹にあります。
例えば、袈裟の功徳には以下のような驚くべき力があると説かれています。
重罪を犯した者でも救う力
もし釈尊の法のもとで出家し袈裟を着けた者が、たとえ重い戒を犯したり、三宝を軽んじるような重罪を重ねたとしても、一瞬でも敬いの心を起こして袈裟や三宝を尊重するならば、将来仏となる予言(記莂)を受けられずに仏道から退転することはない。
見るだけで得られる不退転の力
諸天、龍神、鬼神、人間、非人(人でないもの)に至るまで、袈裟を着けた者を敬ったり、まして袈裟の一部でも見ることができれば、すぐに声聞、縁覚、菩薩という修行の段階において不退転の力(悟りから退かない境地)を得ることができる。
袈裟は、それ自体が解脱服(煩悩を解脱する服) と呼ばれ、仏の身体であり、仏の心、そして福田衣(福の収穫を与える田に譬えられる衣) とされるほどの絶大な神力を持つのです。
袈裟の持つ「不思議な神力」
この誓願の背景にあるのは、「修行者の猛烈な精進(猛利恆修)の力」ではなく、「袈裟の神力(じんりき)は不思議である」という教えです。
つまり、修行者がいかに懸命に励むかではなく、袈裟そのものが持つ力によって、罪が滅し、福徳が増進するとされます。
実際、袈裟を身に着ける、または袈裟の一部に触れることの功徳は、たとえ戯れや利益のために着用したとしても、必ずや仏道を悟る因縁となると経典に説かれています。ある遊女が尼僧の袈裟を着てふざけたという因縁だけで、後に尼僧となり、地獄の罰を受けた後、最終的に釈迦牟尼仏の時代に阿羅漢の悟りを得たという話も伝えられています。
衆生済度への「自未得度先度他」の覚悟
「もし私の袈裟が功徳を成就しなければ、私は未来に仏にならない」というこの誓いは、自己の悟り(阿耨多羅三藐三菩提)の達成を、袈裟を信じるすべての人々の救済にかけるという、極めて強い慈悲の表明です。
これは、「自未得度先度他」(自らが悟りを得る前に、まず他の衆生を救済する)という大乗仏教の菩薩の精神を象徴しています。袈裟を通して、どんな人であろうと、たとえ悪行を重ねた人であっても、仏道へと引き入れ、最終的に悟りへと導くという、大悲菩薩の揺るぎない覚悟がここに示されているのです。
問いかけとまとめ
袈裟は、仏教の真髄(正法眼蔵)を正しく伝える「仏の皮肉骨髄」そのものであると説かれます。この袈裟の功徳の確実性は、釈尊自身の壮大な誓願によって裏打ちされているのですね。
私たちは、袈裟を日夜頂戴し護持する修行僧のような生活を送ることは難しいかもしれません。しかし、この仏道が流布する良い時代に生まれた幸運を喜び、袈裟や仏法の教えを敬い、その功徳を心に念じることが、悟りへの種を蒔く最初の一歩となります。
身近な仏教のシンボルや作法に、私たちが普段想像する以上に深い功徳と、仏の大きな誓いが込められていることに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
クイズの答え
答え:B. 五つの聖なる功徳(五事の聖功徳)
解説
この誓願は、釈尊が過去世(大悲菩薩の時)に宝蔵仏の前で立てた五百大願のうち、特に袈裟の五つの功徳(五聖功徳)が確実に衆生を救わなければ、自分は仏の悟りを成就しない、という覚悟を示したものです。これにより、袈裟の功徳の絶対性が宣言されました。

