直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。
クイズ: 袈裟の功徳や作法について述べた以下のうち、誤っているものはどれでしょう?
- 袈裟の力は、修行者の勇猛精進の力によるものではない。
- 王宮や村に入る時には、五条衣を着けるべきである。
- 袈裟は「甲冑」に喩えられ、煩悩の毒矢から身を守る。
原文
人有(ひとあ)って、若(も)し兵甲(ヒョウコウ)、闘訟(トウジョウ)、断事(ダンジ)の中(なか)に在(あ)らんに、此(こ)の袈裟の少分(しょうぶん)を持(たも)して、此の輩(ともがら)の中(なか)に至(いた)らん、
自護(じご)の為(ため)の故(ゆえ)に、供養(くよう)し恭敬(くぎょう)し尊重(そんじゅう)せん、是(こ)の諸人等(しょにんとう)、能(よ)く侵毀(シンキ)触嬈(ソクニョウ)軽弄(キョウロウ)すること無からん。常(つね)に他(ほか)に勝(か)つことを得(え)て、此(こ)の諸難(しょなん)を過(す)ぎん。
現代語訳
もし人が、戦争(兵甲)や争い(闘訟)、あるいは訴訟の渦中(断事)にある時に、この袈裟の一部(少分)を持ってその場に行き、自分を護るために袈裟を供養し、敬い、尊重するならば、その場にいる人々は、彼を侵したり、煩わせたり、軽んじたりすることは無いでしょう。
そして、常に他者に勝つことができ、この多くの困難を乗り越えることが出来るとされます。
語句説明
- 兵甲(ヒョウコウ):戦争、武器のこと
- 闘訟(トウジョウ):闘争や訴訟
- 断事(ダンジ):裁判や裁決の場など、物事が決せられる場所
- 少分(しょうぶん):袈裟のわずかな部分、一切れ
- 侵毀触嬈軽弄(シンキソクニョウキョウロウ):侵し破ること、煩わせること、軽んじること
- 諸難(しょなん):多くの困難
詳細な解説
袈裟の「神力」は修行の力にあらず
この袈裟の功徳は、修行者の勇猛精進(猛利恆修)の力によるものではないと強調されています。
袈裟そのものが、凡夫や賢聖には計り知ることのできない不思議な神力を具えているからです。この力によって、袈裟は煩悩の毒矢も害することができない金剛の甲冑に喩えられます。
困難を乗り越える「不退転」の保証
袈裟は古くから解脱服と呼ばれ、過去の悪行による障り(業障)、煩悩による障り、悪行の報いによる障り(報障)など、すべての苦難から解脱できる力を持つと説かれます。
この五番目の功徳は、戦争や訴訟といった世俗の争いの場においても、袈裟を恭敬し尊重する者には、他者からの侵略や軽視を防ぎ、最終的に諸難を乗り越えさせると約束しています。
袈裟を身につけることは、成仏への確かな保証であり、袈裟を護持する者は、たとえ戯れに着けたとしても、必ず仏道を悟る因縁となるほど広大無量の功徳があります。また、わずか一日一夜でも袈裟を正しく伝え護持する功徳は、最勝最上であるとされます。
仏道の「形」を保つことの重要性
袈裟の功徳は、その形(儀式や作法)を通して現れます。袈裟を受ける者(在家・出家問わず)は、袈裟を頭の上にいただいて合掌し、「大いなるかな解脱の服よ、無相の福田の衣よ…」という偈(げ)を唱えるべきとされます。
袈裟を身につけることで、内面の変化だけでなく、出家僧の姿を現し、それを見る者さえも邪心が無くなるという現実的な効用も説かれています。袈裟を尊重し、形を整えることが、仏道の精神を保ち、功徳を成就させる基盤となるのです。
問いかけとまとめ
私たちは、辺境の地、末法の世に生まれながらも、仏祖が代々相続してきた袈裟と法に会うことができた幸運を喜び、袈裟を大切に護持し、仏道の精神を修習すべきです。
袈裟が象徴する仏道の精神を日々の生活の中で大切にし、功徳を積み重ねること、それが最も確かな護身の道ではないでしょうか。
クイズの答え
B.王宮や村に入る時には、五条衣を着けるべきである。
解説: 袈裟には五条衣、七条衣、大衣(九条衣以上)の三種があります。王宮や村に入る時(人々に教化し敬信させる時)など、改まった場では、九条衣などの大衣を着るべきだと定められています。五条衣は労務や人目につかない場所での作業時に着用するものとされます。
