直七法衣店4代目ナオシチです。今日もみんなで袈裟功徳について学んでいきましょう。
3択クイズにチャレンジ!答えは最後に。
クイズ:『正法眼蔵』で語られる釈尊の過去の誓願において、袈裟の功徳は何種類含まれていたでしょうか?
- 3種類
- 5種類
- 10種類
ぜひ、最後まで読んで答えを確認してください。
原文
世尊大衆(ダイシュ)に告げて言(ノタマ)はく、
「我れ往昔(ソノカミ)宝蔵仏の所(ミモト)に在りし時、大悲菩薩たり。爾(ソ)の時に大悲菩薩摩訶薩(マカサツ)、宝蔵仏の前(ミマエ)に在りて発願(ホツガン)して言(モウ)さく、」
現代語訳
釈尊は修行者たちに話されました。
「私は、昔、宝蔵仏の所にいた時には大悲菩薩でした。その時、大悲菩薩であった私は、宝蔵仏の前で発願して言いました。」
語句説明
- 世尊(せそん) 釈尊のこと
- 大衆(だいしゅ) 修行者たち
- 往昔(そのかみ) 過去、昔のこと
- 宝蔵仏(ほうぞうぶつ) 過去の仏
- 大悲菩薩摩訶薩(だいひぼさつまかさつ) 偉大な慈悲を持つ菩薩、すなわち後の釈迦牟尼仏(釈尊)の修行時代の姿
- 発願(ほつがん) 仏道において願いを立てること
詳細な解説:袈裟に込められた釈尊の慈悲
過去無量劫の誓願
この説話は「過去無量阿僧祇劫」(とんとん昔)の出来事として始まります。釈尊の過去世は、宝海梵志という名の大臣でした。彼の息子の一人が出家して宝蔵如来(宝蔵仏)となった後、宝海大臣は自らも衆生済度を願い、大悲菩薩という名で修行に励んでいました。
大悲菩薩は、すべての衆生を救うために「五百の大願」を立てて悪世成仏を願いました。宝蔵仏はこれに応じ、宝海(大悲菩薩)が未来世に娑婆世界で成仏し、釈迦牟尼仏となるという「授記」(予言)を与えました。この五百の大願の中に、袈裟の五つの功徳に関する誓願が含まれていたのです。
悪を犯しても救われる絶対的な保証
大悲菩薩の誓願(袈裟功徳その一)の骨子は、極めて強固です。
「私が将来仏となった時、たとえ重い罪を犯し、三宝を軽んじる者であっても、もし一瞬でも敬いの心をもって大衣の袈裟を尊重するならば、その者が将来仏となるという保証(記莂)を受けられずに修行を退くことがあれば、それは全世界の諸仏を欺くことになり、私は決して仏の悟りを成就しない」。
この誓願は、袈裟の授受が「成仏への確かな保証」であることを意味しています。袈裟を身に着けること、あるいは一瞬でも敬う心を起こすことが、過去の悪行を帳消しにし、地獄に堕ちる因縁を持つ者さえも救う力がある、と説かれています。
袈裟の神力は修行者の力に勝る
『正法眼蔵』は、この袈裟の功徳は、修行者の勇猛精進(猛利恒修)の力によるものではなく、袈裟自体の持つ不思議な神力によるものだと強調します。袈裟は、ただの衣服ではなく、「仏身であり、仏心」、また「如来の教えを身に着けたてまつりて、広く諸の衆生を度(わた)さん」ための解脱の服です。
袈裟を身に着けることは、釈尊の「皮肉骨髄を正しく伝えている」ことと同義であり、この衣を護持する者は、たとえ戯れに身に着けたとしても、必ず仏道を悟る因縁を得るのです。
問いかけとまとめ
釈尊が過去世の大願によって保証し、代々の祖師が親しく伝えてきた「正伝の袈裟」。これは、遠方辺地にある日本で仏法を学ぶ我々にとって、山海にさえぎられることなく伝えられた宿善の賜物です。
袈裟が持つ力は、私たちが自ら励む修行の成果を超えて、仏祖の慈悲が形として現れたものです。難解な仏教の教えも、袈裟という具体的な形を通して、私たちを悟りの道へと確実に導く力があることを、深く心に留めておきたいものです。
あなたは、今、ご自身の人生において、何を「仏身であり、仏心」と見なし、謙虚に、かつ誇りを持って受け継ぎ、護持しているでしょうか?
クイズの答えと解説
B. 5種類
解説:大悲菩薩(釈尊の過去世)が立てた五百の大願の中には、特にこの袈裟の五つの功徳に関する誓願が含まれており、これらは後に「五聖功徳」として重要視されています。